赤外写真に挑戦する話。
このブログ一番最初のポストにあった写真は赤外写真でした。赤外写真のノウハウについてザックリ書き残すことにします。
デジタル赤外写真の魅力
白く映った木々の枝葉、落ちるように暗い空にぽっかりと浮かぶ雲、遠くまではっきりと映ったビル群…赤外写真には独特の魅力があります。一度その写真を見ると、手を出したくなるに違いありません。少なくとも私はそうでした。
一昔前には赤外フィルムがありましたが、現代では数えるほどしか残っていません。フィルムを用いた赤外写真は難しい世の中と言う他ないでしょう。
一方で、ちょっと前のコンデジの中古などは安価で販売されています。ミラーレスだってそろそろ古い機種はお小遣いで買えちゃいます。SONYのEマウントミラーレスのエントリー機の下落っぷりは凄いですよね。
そういった手軽なカメラをちょちょいと改造し、赤外線フィルタを取り付けるだけで撮れてしまうのが赤外写真。デジタル全盛の今日はフィルムの頃よりむしろハードルが下がっている様にすら思えます。
とはいってもやっぱり赤外線は未知の世界。なんて言ったって目に見えないから想像もしにくい。何から始めればいい??という人に向けて、赤外線写真のノウハウを書き残してゆこうと思います。
そもそも赤外線ってなんぞ
赤外線。赤外線リモコンや遠赤外線ストーブなど、よく聞く言葉のわりにしっかり理解できていないもののようにも思います。
赤外線とは可視光よりも波長の長い(=周波数の低い)光のこと。波長がだいたい740nm~が赤外線と呼ばれます。文献によって700nmだったり780nmだったりと多少ばらつきますが、だいたいその辺が境目と思っていただければ問題ありません。
赤外線写真の光は赤外線の中でも比較的波長の短い=可視光寄りのものを使います。いわゆる近赤外線というやつです。最近流行りのカラーの写真では、赤外線写真と言いつつ、赤~近赤外線の領域の光を用いて撮影しているんです。そう、赤=可視光も含んでる。これがちょっとしたミソなのです。
デジタル赤外線写真を撮るために必要な事
有害光カットフィルタを取り外す
普通のデジタルカメラでは葉っぱは緑に写ります。赤外線写真のように白くは写りません。これは可視光を透過し、赤外線や紫外線をカットするフィルターが取り付けてあるからです。
ミラーレス機のボディキャップを外すと簡単にセンサーが見えますが、その前面についてるマゼンタやシアンに輝くガラスがそれ。ローパスとか呼ばれたりしますが、ベイヤーセンサーの前面に取り付けられているマイクロレンズとはたぶん別物。ややこしいので便箋上「有害光カットフィルタ」と呼ぶことにします。
これです。このガラス板を取り外します。
取り外した後の状態が下の画像。センサーそのものはグレーっぽい色で、有害光カットフィルタとは全く反射の色味も量も異なります。
分解方法とかは使う機種によって千差万別なので、ここでは詳しく解説しません。SONYのミラーレス一眼のエントリー機なら、調べれば分解レポートが出てくると思います。
僕は中古で安くNEX-7を購入し、カットフィルタを引っぺがしました。若干壊したけど後悔はしていません。電子先幕シャッターが使えるボディを赤外改造すると天体写真なんかのブレが抑えれるのでお勧めです。
赤外透過ー可視光カットフィルタを取り付ける
もう一つ重要なことが赤外フィルタの取り付けです。有害光カットフィルタを取り外すと、紫外線~赤外線まで広い領域に感度を持つセンサーが出来上がります。これをフルスペクトルカメラと呼んだりします。天体写真とかではこの状態でもあまり問題ないのですが、赤外写真を撮る場合は赤外線を抽出しなければなりません。
そこで取り付けるのが赤外透過ー可視光カットフィルタです。長いので、単純に赤外フィルタとか呼ばれたりします。このフィルタは名前を見て分かる通り、可視光域の波長の光を遮断し、赤外線の波長を透過するフィルターです。これを取り付けることによって、欲しい領域の赤外線のみで撮影することができます。
このフィルタとしてメジャーなのがフジフイルムから出ているSCフィルタとIRフィルタ。SCはシャープカットの略で、任意の波長を境目として光を遮断することができます。IRは赤外線領域におけるSCフィルタ。波長によって名前が変わりましたが機能は同じです。
SC-70とかIR-82とか、型番にくっついている数字はカットする境目の波長を示します。70なら700nm、82なら820nm。数字が大きい=長波長=赤外線多め、逆に小さい=短波長=可視光も含む、って感じです。
ビルや山々がくっきりはっきり写ったモノクロの赤外写真を撮りたい場合は、IRとついているフィルタを取り付けます。
一方で、冒頭の写真にある様なカラーの赤外写真を撮りたい場合は、可視光領域も使用しますのでSCのフィルタを使用します。
何番がよいのかは個人の好みでしょうから、何とも言えません。私の好みはSC-70。いちばんバランスが取れていると勝手に思っています。
この赤外フィルタを、有害光カットフィルタの代わりに取り付けることで赤外写真が撮影できます。私はセンサー前面にこんな感じで取り付けています。
これで赤外線カメラが出来上がりました。後は適当なレンズをつけて撮影に行くだけ!
赤外写真向けの被写体
赤外写真を撮るためには、赤外線があることが必須です。
いや何を言ってるんだ当たり前だろ!と言われそうですが、意外と難しいんですよ。
室内などの人工光の下では、赤外線は非常に少ないです。蛍光灯やLEDなんかは、白色であっても発光のスペクトル(波長)が限られており、赤外線を出していません。赤外線出しても人間の目には見えないし、消費電力を抑えるためには要らない光を出さないのが吉です。あたりまえですね。
曇天でも赤外写真らしい写真は撮れません。赤外線は波長が長く、回折しやすいため、可視光に比べメリハリがつきにくいんですね。とくにカラーの赤外写真では後処理がしにくくなりますので、それなりに工夫が必要です。
ここまででお分かりの通り、晴天屋外が一番条件が良いです。太陽から大量の赤外線が降り注いでおり、コントラストの高くパキッとした画像になります。良く晴れて雲の浮いている日なんかは最高ですね。赤外写真らしい、黒い空に白い雲がぽっかり浮かんでいる写真が撮れます。ぜひ晴れた日は赤外カメラを持ち出しましょう。
赤外写真の画像処理…は次回
白状すると、ここまでの改造をすべて行っても、冒頭の画像は出てきません。撮影した後の画像処理が必要なんです。
実は赤外カメラで見える景色というのはこんな感じです。
酷い色ですね。普通の人がこのカメラを覗いたら、壊れていると思っても仕方ないです。まぁ実際に一度壊してるのですが…
これを青い空に加工してゆくプロセスが必要です。カラースワップとか言われるやつですね。それの解説はまた長くなるので次回、ということで。
ではでは。