光害カットフィルター付きマウントアダプタを作る話。
光害だらけの日本で天体を撮影するには欠かせないアイテム、光害カットフィルタ。入手したものの使えない→アダプターに組み込んじゃえ!ってなるまでの過程について書き残します。
光害カットフィルタを買った
ある時、某カメラチェーン店の中古フィルタ棚を除いていた時のこと。
怪しい色に光るコーティングがついたフィルタがあったのです。なんだこれ、と手に取って調べてみると光害カットフィルタだと。52mmのフィルタにしちゃ随分高級だったんですが、とりあえずこの機会を逃したら二度と中古品で出会うこともないだろう…という安直な考えで購入しました。
これですね。定価を考えるとずいぶん安く入手できたと思います。
そこからずいぶん時は流れ、このお高いフィルタは長い間死蔵されていました。最近になって天体撮影を始めたことから、思い出したように引っ張り出してきたのです。
我が家のα7はUV/IRカットフィルタを外し、天体撮影用に改造しています。先日ブログ記事に書いていますので、詳しくはそちらでどうぞ。
天体撮影用のフィルタなのだから、ぜひともUV/IRカットフィルタを外したボディで使いたい。
しかしフィルタ直径が52mmと、いまいち手持ちのレンズと合わない。星雲撮影で使用頻度の高いNew FD 300mm/2.8のフィルタ径は48mmなのです。
ニコンの300mm/2.8なら適合するのですが、中古でも30万円以上のレンズを買うことはできません。
何とか今の機材でどうにかならんやろか…
アダプターを作る
じゃあFマウントとEマウントの間にフィルタ入れればいいんちゃうん!?
という軽いノリで製作してみました。アイデアをひらめいたときは最高にクールな名案だと思うのですが、そのあと苦労するのはいつも通りのことです。
Step 1. Nikon F - M52マウントアダプタを作る
ということで、まずはK&F conceptのNikon F - Sony Eマウントアダプタを旋盤で削ります。そこに同じく旋盤でうすーっく削った52-62mmステップアップリングを接着剤でくっつけていきます。
今回、お高いフィルタは0.1ミリメートルたりとも削りたくないので、フランジバックから前後のアダプターの厚みは決まってきます。
ニコンGタイプのマウントアダプターには絞り制御用のリングがありますのでフランジバックに納まるか不安だったのですが、リングを殺さない限界まで頑張って削ることでなんとか規定の厚みに収めることができました。
旋盤使ってるときは作業に夢中なので、いつものごとく改造後の写真しかないのはお許しください。
接着剤はエポキシ硬化タイプのアラルダイトというものを使っています。接着面が平滑であれば金属であろうとガッチガチにくっつくのでお勧めです。
この時点で、Nikon F - M52という謎のマウントアダプターが出来上がりました。写真の通り、通常のマウントアダプターの1/2くらいの厚みになっています。
Step 2. M52 - Sony Eマウントアダプタを作る
続いてフィルターからEマウントまでの後半部分を作ります。
前半部と同様、42-52mmステップアップリングを旋盤でサクサク削り、フランジバックを稼いでいきます。
それをM42 - Sony Eマウントアダプターにねじ込み接着すれば完成!
若干接着剤がこぼれていますがご愛敬、ということで。
Eマウント内面には反射防止の植毛紙を貼りつけておきます。
Step 3. 組み立て
このNikon F - M52アダプターと、52mm光害カットフィルタと、M52 - Sony Eアダプターをそれぞれくっつけてゆけば…
はい、光害カットフィルター入りマウントアダプターの出来上がりー!
Nikon Fマウントのフランジバックは46.5mm、Sony Eマウントが18mmとなっていますので、必要なアダプターの厚みは28.5mm。今回のアダプターの厚みは28.0mmと、しっかり無限遠の出る範囲に納まっています。
0.5mm短くしたのは、α7のUV/IRフィルタを外したことによりわずかに光路長が変わっており、そのままでは無限遠が来ないレンズがあるためです。
まとめ と おまけ
さて、ここまで書いておいてなんですが、じつはこのアダプターは使えませんでした。
原因はよく分からないのですが、実際に星を撮影してみると片ボケの症状が出るのです。詳しく検証し次第、(めんどくさくなければ)ちゃんと記事にまとめようかなーと思っています。
さて、このアダプタを製作したのはずいぶん前なのですが、ブログネタとして温めていた間にキヤノンからEOS Rが発表されましたね。その中にしれっと、フィルター入りマウントアダプターが…
今のところ発表されているのはNDとC-PLだけのようですが、ぜひ光害カットフィルタも作ってほしいですね。Hα対応EOS Rとセットにして販売すれば天体クラスタにバカ売れしそうな…気がするのですが。