Biogon 21mm f/2.8の色かぶりを消す話。
α7にコンタックスGマウントのBiogon21mmをつけて撮影した際の周辺部の色被りをどないかするために奮闘する話です。
Biogonとはなんぞ
この記事で話題に上るBiogon21mmというのは、京セラから発売されたコンタックス銘のレンジファインダー用レンズのことです。Gマウントと呼ばれるマウントを使用しており、マウントアダプターを経由することでSONY Eマウントに取り付けが可能。
Gマウントシステム用には7本の純正レンズがリリースされました。広角単焦点レンズは35mm、28mm、21mm、16mmの4本。どのレンズもツァイス銘ながら比較的手ごろなお値段のため人気があります。歴史とかは詳しい人に聞いてください。
しかし!Biogon21mmとHologon16mmのレンズをデジタルカメラで使うとテレセントリック性の悪さから色被りや象の流れが顕著に現れることが知られています。α7に取り付けた場合、周辺部のマゼンタ被りは免れられません。
色被りってどんなもんよ
まぁオールドレンズですし。多少の色かぶりはご愛嬌というものでしょう。とりあえず何の気なしに撮った解放2.8のサンプル画像をどうぞ。
色被り以前に強烈な周辺減光ですね。たしかに左右の端の空がマゼンタに転んでいるのが見て取れます。ちょっと気になりますね。
これをただ単純に周辺光量補正するとこうなります。
フォトショップのトーンカーブを使って、周辺部を適当に明るくしてみました。周辺に行くにつれて効果の大きくなるようにグラデーションツールを使ってマスクしてあります。
周辺部のマゼンタ被りはより一層わかりやすくなりましたね。また周辺減光も空の明るさにムラが出ています。レンズによる減光がマスクのグラデーションと一致していないためです。丁寧にマスクを作ればいい話ですが、そんなめんどくさいことはやりたくありません。もうちょっと楽をして周辺部の画質をアップさせたいところです。
フラット処理を試す
フラット処理、と聞いて”あぁあれね!”と理解できる人は天体写真撮ってる人。たぶん。一般の撮影ではあまり用いられないプロセスだと思います。
通常ではほとんど映らない淡い天体を鮮やかに映し出す天体撮影分野では、撮影した複数の写真をコンポジットしてSN比を上げ、コントラストを極限まで高めるのが普通。機材がモノをいう世の中です。怖い。
しかし現代の最新天体望遠鏡を使っていても、周辺減光から逃げることはできません。コントラストを極端に上げると、周辺減光までもが強調されてしまい、見た目が悪くなってしまいます。そこで、あらかじめ周辺減光のパターンを撮影しておき、画像処理段階でその周辺減光パターンを利用して補正をかけることで、均一な画像を手に入れています。このプロセスをフラット処理と呼び、周辺減光パターンを撮影したデータはフラット画像と呼ばれています。
正直僕もあまり詳しくないので、ここも詳細は専門の方に譲ります。天文写真なんてかじっただけなので、本来はもっとディープな世界のはずです。仕組みが気になる人は各自ググってください。
さて理論はともかく早速試していきましょう。なにはともあれ、まずはフラット画像を作るところからです。今回は画像のようにLEDのバックライトパネルをレンズ前面に押し付けて撮影しました。バックライトパネルにはシルボン紙を張り付けて光を拡散させています。画像は蛍光灯とバックライトパネルの色温度が違うせいで色味がコケてますが気にしない。
フラット画像を撮影する際の絞り値は撮影データと同じに設定します。天体撮影の分野ではISO感度も合わせるようですが、我々はそこまでシビアに加工するわけではないので最低感度で問題ないと思います。白飛び・黒潰れがないようヒストグラムを見ながらシャッター速度を決めてください。
撮影されたフラット画像をフォトショで開いたのがこちら。
これを色被りしていた先ほどの画像の上にレイヤーとして読み込みます。
ブレンディングは「除算」を選択。
するとなんということでしょう!
目立つような周辺部の色被りはほとんどなくなりました。隅にちょこっとだけ濃いマゼンタが見えます。この部分はもともと減光のきつい部分なので、こういった誤差が出てくるのかもしれません。
周辺減光がなくなると、むしろ像の流れのほうが気になり始めます。こちらは色被りのように補正できるものではないので、味として楽しむしかないでしょう…とはいえやっぱり気になるので、周辺減光を作って誤魔化したいと思います。
もともとの周辺減光を移植する
ということで、フラットデータをモノクロに変換します。レイヤーとして先ほどの画像に読み込み、ブレンディング「乗算」で重ねます。結果は次の通り。
周辺減光だけが元通り!
わかりにくいと思うので、一番最初の撮って出しがこんな感じでした。↓
どうでしょう?いい感じにマゼンタ被りのみが除去されています。周辺減光のパターンは本来の形と同じまま。なかなか素敵な仕上がりです。
また乗算で重ねた周辺減光のデータの透明度を変更することで、減光の濃さをお好みに調整することができます。これも一つのメリットではないでしょうか。
ぶっちゃけ処理はやっぱり面倒
テレセントリック性の低いオールドレンズに対するフラット処理の有用性をご紹介してみました。
かなりきれいに色かぶりを除去できたので、個人的には結構いいアイデアだと思っています。しかし問題点もしっかりございます。
- フラットデータを撮るのが面倒
- 絞り値ごとにフラットを撮って管理するのも面倒
- オールドレンズなので絞り値がExifに記録されず、覚えておかないといけないのも面倒
まぁこの3点でしょう。なんといってもフラットデータという新たな存在を管理するのがめんどくさい。適切に運用するにはそれなりに根気が必要そう、という結論に至りました。そんなに簡単じゃありませんね。
では。